ピマーイ探険記(2)

by チャーリー岸田

バンコクの夜

 我々一行がバンコク空港に着いたのは現地時刻の深夜0時過ぎ。空港には、柴木隊長とバンコク駐在員の太田君が迎えに来ていた。

 柴木隊長はタイ東北部で小売業を営む社長。太田君は日本企業のバンコク駐在員として現地工場の監督をしている。今夜、我々一行は太田君の住む高級アパートに泊ることになる。

岸田 「腹減ったっす。」
K先輩 「俺も。」
 経営難のユナイテッド航空の機内食は異常にセコかった。こんな量では飢え死にしてしまう。

 しかし、バンコクでは深夜でも食には困らない。普通の飲食店は早い時刻に閉店しているのだが、そこは「食」のアジア、深夜まで路上の屋台は活気に満ちている。

 我々は太田君の高級アパートの近くの屋台でクィッテオ(米で造った麺。タイではメジャーな食べ物)を食べた。
 しかし屋台にはアルコール類を置いていない。まずは再会の祝杯を挙げたい所なのだが、この時間帯に酒を飲める所は、ここでは妖しい店だけである。おまけに太田君のアパートがあるのは「タノン・スクンビット・ソイ23」と言う、妖しい店の集中している一角なのだ。

「まあ、とりあえずビールだけでも・・・」
 我々は近郊の場末のGoGoバーに入った。

 「GoGoバー」とは、いわゆる風俗店である。ステージの上で水着のおねえさんたちが踊っており、客はそれを眺めながら酒を飲む。また、客は気に入った子が居れば店にお金を払っておねえさんを連れ出せると言う仕組になっているのだ。東南アジアで欧米人(主にアメリカ人)が現地人の若い娘さんを連れて歩いている姿を見掛けることが多いが、実はその多くがこのような店でGETした娘さんである。

 しかし、バンコクのGoGoバーはHIVウィルスが蔓延している場所でもあり、日本人の多くは恐がって近付かない。

 俺たちは再会と探険の成功を祈って祝杯を挙げた。ステージの上では現地のおねえさんたちが異様な盛り上がりを見せていた。お互いに水着の脱がせっこをしていたり、引っ繰り返って抱き合ってみたり、何が何だか判らない状態になっていた。

「わははははははは!」
 俺たちはそのアジアの活気に圧倒されながらも笑い続けた。

 深夜2時、店は閉店となり、水着のおねえさんたちはその格好のままタイムカードを押してぞろぞろと更衣室に引き揚げて行った。我々は太田邸で飲み直すことにした。

 太田邸は日本の駐在員が多く住む高級マンションである。ゲートには24時間体制で警備員が居り、部屋は2ベッドルーム(つまり、バスルームも2つある)で広いリビングがある。一人暮らしには広過ぎるのだが、警備上の理由で外国企業の駐在員はこのような高級マンションに住むのが一般的である。安いアパートでは治安を保てないのだ。

 添付の写真は太田邸マンションのゲート付近。

バンコクの高級マンション

 カメラを向けたら照れて横を向いてしまった警備員は、怪しい連中(俺たちのこと)が勝手に出入りしても、笑顔で手を振って笑顔を見せるだけで何もチェックしない。これでは警備の意味が無いのではないかと思われるのだが、タイではあまり細かいことにはこだわらないのが流儀のようである。

つづく

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