ボルネオ植林報告(3)

by チャーリー岸田

その3「ルースン族」

マレーシアには、大別して下記の3種類の民族が住んでいる。

  • マレー人
  • 華僑 (中国からの移民)
  • 印僑 (インドからの移民)
 これら三民族は顔も違うし言葉も宗教も異なる。我々外国人から見てもあからさまに見分けがつくほどの外見上の違いがある。多くの東南アジア諸国とは異なり、マレーシアではほとんど民族間の混血が進んでいない。しかしこの国の人々は自らの民族の伝統を守り、お互いの伝統を尊重しながら、複数の民族が仲良く協調して暮らしているようだ。

 おそらく常に仲が良い訳でもないのだろう。昔は民族間の葛藤などもがあったのだろうし、今でも我々の知らない所で民族間の色々な問題があるのかも知れない。しかし、数日間我々が見た範囲では、そんな気配は微塵も感じなかった。

 また、ボルネオ島には、上記三民族と異なる数種類の少数民族が居る。

 今回のツアーには、ボルネオ島先住民である『ルースン族』のガイドが付いた。彼らガイドたちは自分たちの民族の言葉に加えて、同じボルネオ島の他の少数民族の言葉、マレー語、英語、日本語などの多くの言葉を解する人々であった。
 毎日植林地に同行し、俺たちと一緒に植林作業を手伝うのだが、さすがに熱帯の人々である。草深いジャングルを身軽に歩き回る姿は颯爽としていた。

 植林初日の朝、昨夜コタキナバルに着いたばかりの我々は、各自思い思いの作業服に着替え迎えのバス2台にに乗り込んだ。海に面したビーチリゾートを後に、これから植林労働に向かうのだ。送迎バスには俺たち植林ボランティア一行と、日本の旅行社の添乗員、それとルースン族のガイド数名が乗っていた。首都のクアラルンプールから来たマレーシア現地法人の一行は、泊るホテルが別のため現地集合となる。

添乗員 「はい、それではバスが出発します! 各班のリーダーの方、メンバーが揃っているかどうか確認して下さい!」
    「1班は全員いまーす!」
    「2班もいまーす!」
    「3班もOKですっ!」
    ・・・以下同文

 全員がバスに乗り込んだ後、添乗員は念のため人数を数え始めた。ここで乗り遅れた人が居ては大変だ。

添乗員 「1人、2人、3人・・・・・・あれっ? 1人足りない。もう1回数えます。」
 何回数えても同じだった。
添乗員 「誰か間違って2号車に乗ってしまったかな。2号車を見て来ます。」
 ところが2号車は人数ピッタリだった。
添乗員 「う〜む。どうしたんだろう? それでは全員のお名前をお呼びしますので、名前を呼ばれた方は返事お願いします。」
   添乗員は名簿を取り出した。
添乗員 「○○さん!」
○○  「はいっ!」
添乗員 「××さん!」
××  「はいっ!」
添乗員 「岸田さん!」
岸田  「はいっ!」
添乗員 「えっ?・・・」

 ここで原因が判明した。添乗員はバスに乗り込んだメンバーのうち、岸田のことをルースン族ガイドだと思ってカウントしていなかったのだ。それで日本側のメンバーが1人足りなくなったのだ。

 しかし・・・いくら何でも『ルースン族』ってことはないだろう?

 東南アジアには華僑が多いので、岸田は時々華僑系の現地人に間違えられることがある、ヨットで日焼けしていることが原因だろう。しかし熱帯の島の先住民と間違えられるなんて・・・なんて光栄なんだ。

ルースン族?

追記

 帰国後、一緒に植林に参加した仲間から、この話が会社に伝わった。
 人の噂とは恐ろしいもので、人から人へと話が伝達される過程で、話の内容が間違って伝えられていたのだ。
 会社の中で、下記の噂が広まっていた。

 「ボルネオ島のジャングルで、岸田がオランウータンと間違えられた。」
 それは違う! 猿と間違えられた訳ではない! いくら何でもそれは無いっ!

つづく

■熱帯雨林再生事業の詳細は、下記のURLを参照して下さい。

 http://journal.fujitsu.com/268/greenlife/



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