両 替 屋
by チャーリー岸田

キングスカップに行く直前、両替について話題になっていた頃に来た話です


去年フィリピンに行ったときの、両替の話を送ります。
タイとフィリピンでは国民性や社会の仕組みが違うので、同じ方法が通用するかどうか解りませんが、参考までに読んで下さい。


 マニラ空港に到着し、空港で両替しようとしたら、フィリピン人のリンダがそれを止めた。

「エアポートはレートが悪いよ。ダウンタウンで替えようよ。」
なにしろ岸田はフィリピンは初めてなので、現地人のアドバイスに従った方がいい。
リンダは俺達をマニラのダウンタウン(日が暮れたら危険な町になって、外国人が歩けないあたり)に連れて行き、掘っ建て小屋の両替所に連れて行った。

当時のレートは、1ペソ5円前後。空港では1万円が2000ペソ弱だった。
ダウンタウンの両替屋は全部が「1万円:2080ペソ」。皆、同じレートだった。

そのうちの一軒に入り、リンダが交渉を始めた。

「1万円2080ペソは安過ぎるよ。もっと高くしてよ。」


「駄目だ。これが協定料金だ。1ペソも負けることはできない。」


「でもこの日本人は20万円両替えしようとしているのよ。額が大きいんだから、もっとオマケしてくれてもいいじゃない!」


「そうか、20万円だったら2100ペソにしてやろう。」

「馬鹿言ってるんじゃないわよっ! 20万円も替えようとしているのに、たったの2100ペソは無いでしょ!」

「そうか、しょうがない、2200ペソだ。これ以上は負けられない。」

「なによそれ! 2200ペソなんて、そんなレートじゃ20万円も替えられないわっ! それじゃあとりあえず、そのレートで1万円!」
リンダは1万円札をカウンターに叩きつけた。
両替屋は2200ペソをカウンター越しに出した。

いったい何なんだ? 相手は20万円もの大金を替えると言う条件で、2200ペソに負けてくれたわけだ。普通だったら、「そのレートで1万円!」なんて言われたって、「1万円だったらそんなに負けられない。」って言われて終りだろう。ところがこの両替屋は、こんな単純なインチキに気付いていないんだ。リンダも最初から1万円だけ替えるつもりで『20万円』なんてハッタリをかましただけだったんだ。

この交渉はタガログ語で行われたので、岸田は後からリンダに経緯を聞かされた。

「それは論理が破綻してるんじゃないか? どうして両替屋は『1万円ならそのレートは駄目だ』って言わなかったんだ?」

「フィリピンは暑いから、皆んな馬鹿になってるのよ。」

何か納得できないが、とりあえずフィリピンではそれが通用していた。フィリピンが先進国になることは永久にないだろう。

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