ディスクロージャー

〜雪の夜 続編〜

by チャーリー岸田


大雪の翌日、朝日新聞には下記のような記事が書かれていた。
『電車が止まったのは雪のせいなのだから、駅員を責めるのは良くない』と。
たしかにJRの職員はそれなりに頑張っていたのだろう。電車を走らせるために。しかし、駅員の行動には納得できないものが残る。

  1. 岸田が0時に溝ノ口駅に到着したとき、駅には貼り紙などによるインフォメーションは一切無かった。
  2. 以前から待っている人によると。少なくとも20時から4時間の間、全く構内放送によるインフォメーションは流されていなかった。
  3. 個別に駅員に状況を尋ねると。答えはすべて『何も解らない』。
その後、駅舎内に入ってから、JRの監視センタから流されて来る業務放送に耳を傾けていると、色々な情報が入って来ていた。現在動いている路線と止まっている路線。止まっている路線の復旧作業の進捗状況。復旧の見込み時刻。バスなどによる振替え輸送の手配状況。及びバス会社の路線バスの運行状況。
ここで岸田は暇そうな駅員に質問した。

Q.
どうして業務放送の情報を乗客に伝えないのか?
A.
不確実な事は一切言えない。何時に復旧予定。などと言ってしまったら、予定が遅れた場合、お客に怒られてしまう。だから何も言えない。
Q.
現在の状況だけでも伝えないと、お客は状況に対処できないで困ってしまうのではないか?
A.
上記の理由で何も言えない。
Q.
業務放送では『市営バスは、雪道が危険だから本日の運行は全部終了。』と言っているが、外のバス停で吹雪の中で何も知らずに来ないバスを待っている人達にこの事を教えてあげるべきではないか?
A.
JRとバスは別の会社なので、バスの運行状況をバスの乗客に伝える義務はない。
Q.
JRによる振替輸送のバスは出せないと言っているが、この事を外で待っている人達に伝えないと、彼らは朝まで待つことになるのではないか?
A.
伝えても彼らが帰れるわけではないので、言う必要はない。
JRに限らず、これが公共機関職員の一般的な発想だろう。
『責任』と言う言葉を英訳した場合、

  1. オブリゲーション

  2. 義務を果たす責任(JRの場合は電車を走らせること)

  3. アカウンタビリティ

  4. 自分の立場や状況を他社に説明する責任(この場合は乗客に対する状況説明)

上記の2種類に分類されるが、日本の役所や公共機関(及び銀行)には後者のアカウンタビリティと言う発想が無く、これが、日本が海外で信用を失っている原因だ。
おそらくJRの現場作業員および技術者は、吹雪に中で必死の復旧活動をしているのだろう。しかし、駅員がこの態度ではJR全体の信頼が無くなっても当然だ。

たとえば銀行のコンピュータにトラブルが発生してオンラインが停止してしまった場合など、コンピュータメーカーの技術者は、復旧作業に忙殺されていたとしても、ユーザ(銀行員)に対する状況説明を欠かすわけには行かない。あたりまえの話だ。
民間企業ではあたりまえのこんな常識が、公共機関の職員には全く欠けているのが現在の日本の状況だろう。そしてこれこそが平成大不況の原因の一つであると言える。

以 上

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