濱ちゃんワールド

by  ショーケン   

 キングスカップに一緒に行った唐津の陶芸家、濱田さん(以下 濱ちゃん)の艇「WIN」でアリランレースに参加することになった。アリランレースは外洋レース。艇を見ておかないと心配だ。
 そこで、元ヨット業者の柴木氏と2人で「WIN」を見る目的で九州に行った。福岡にはJUST福岡支部長、小松大師匠がいらっしゃる。現地で小松さんと合流し、唐津に足を踏み入れた我々を待ち受けていたのは・・・・・



 
 俺達は唐津のある喫茶店の駐車場で濱ちゃんを待っていた。柴木さんと新幹線で博多に着き小松師匠と合流。師匠の車で唐津にやってきたのだ。しばらくすると白のクラウンが、ものすごい勢いで飛び込んできた。なんだコイツは危ねえな。するとクラウンの中から現れたのは、白い子犬を抱いた濱ちゃんではないか。
「わははは。よー来た。よー来た。あとは全て段取りしてあるけん、心配せんでよか」
濱ちゃんはついて来いと言ってクラウンに乗って走り出した。狭い道を飛ばす飛ばす。白い子犬は車内で跳ね回っている。おいおい、待ってくれ。そんなに飛ばして大丈夫なのか?
 そう、ここは唐津。濱ちゃんにとっては庭のような「濱ちゃんワールド」なのだ。

 寿司屋での昼食が済んで、濱ちゃんの艇「WIN」が係留されている漁港へやって来た。それにしても今日は寒い。雪まで降っている。2年前に旅行で来た時も雪だったぞ。俺が九州に来るときは雪と決まっているのか?
 艇までどうやって渡るのだろう、と思っていたら、簡易ポンツーンがもやってあった。濱ちゃんの自作だと言う。艇は古いが、マメに整備されているようだった。スピンポールのネックのスライダーが固かったが、これは構造上の問題で仕方がない。ハリヤード類も痛んでいないし、シャックルも軽くはずれる。完璧だ。濱ちゃんはマメな人だった。
 船内に入ると、倉庫のように予備パーツや生活用品が積まれている。それにビールや焼酎、料理道具、何でもあるようだ。しかし、船内は広く、少々片付ければ、長いレースも快適だろう。バースも11名分ある。
 濱ちゃんがコーヒーを入れてくれた。なんとドリップ式だ。柴木さんが艇を色々と点検し、「これだったら、何の心配もない」と言うことで艇の下見は完了した。

 それから、濱ちゃんの窯「櫻窯」へ案内された。途中、濱ちゃんの自宅を通る。県道を走っていると、「何だあれは?」。何と入り口にヨットが鎮座している家があるではないか。それもディンギーのようなチャチなヨットではなく、立派なクルーザーだ。なんとあれが濱ちゃんの家だと言う。家が何軒も建ってるけど、あれ全部が家なの?あ、半分がアパート(と言うか貸家)なんだ。だけど10軒以上あるぜ?え、15軒?すごいなー、濱ちゃんって大地主さんなんだ。
 何でも、唐津駅でタクシーの運転手に「入り口にヨットが置いてある家」と言えば、濱ちゃんの家に行けるのだそうだ。嘘だと思うなら、試してみてほしい。きっと驚くべき光景があなたを待っているだろう。

 窯は自宅から車で5分程の距離にあった。道はついにクラウンの幅程に狭まったが、濱ちゃんはマイペースで爆走する。
 窯では、大きな犬達が出迎えてくれた。おいおい濱ちゃん、何匹飼ってるんだ?そして、噂に聞いた「登り窯」を目にする。俺は、窯というものを見るのも生まれて始めてなので、それがどれだけすごいものかわからないが、かなり手が込んだ造りなのはわかる。
 さあ、窯出しだ。今日のために徹夜で焼いた唐津焼の窯出しを手伝わせてくれるそうだ。そこまで段取り出来てるなんて涙が出るほど嬉しいぜ。
 窯の蓋を開けると、中には唐津焼きがびっしり納まっている。まだ熱いので、革手袋をはめて1個1個丁寧に取り出す。すごいな、これ全部濱ちゃんの作品?不思議な金属音を発している真新しい陶器を取り出しながら、何とも言えない感動を味わってしまった。
 しかも、記念に好きなのを持って帰ってよいという。うわあ、ホント?どれにしよう、とはしゃぎながら湯飲みを2個選んだ。どうもごっつぁんです!

 日が暮れて、宴会がセッティングされているという、唐津の中心部にある大きなホテルに案内された。

「ここはワシが経営しとるけん、遠慮せんでよか」
と濱ちゃんは豪快に笑う。おいおい、本当か?こんな立派なホテルを経営しているのか?
けど何か変だぜ。
濱ちゃん、ホテルのフロントで道順聞いてるし、従業員も濱ちゃんを見ても挨拶一つしない。
まあ、いいか。あまり詮索しないのが大人というものだ。
 

 ここでWINの牧原さん・知念さんと合流、宴会が始まった。素晴らしい魚介類がどんどん出てきてどれもうまかったが、イチオシはイカの刺身だ。イカの刺身って本当は透明だったんだね。笑われるかもしれないが、白いやつが刺身だと思っていたのだ。ゴメンよイカ、あんたは味も見かけもクリアーな奴だったんだね。これから「好きな刺身ベスト5」にあんたを入れるから許してくれ。
 
 翌日は小松師匠・柴木さんと濱ちゃんの工房で陶芸教室だった。生まれて始めてやったけど、大変おもしろい。あっと言う間に2時間くらいたってしまった。俺は「会社でコーヒーを飲むためのマグカップ」を目指して土と格闘したが、完成したらコブシが余裕で入ってしまうようなお化けコップになってしまった。小松師匠には「それはリモコン入れだな」と言われてしまうし、まいったな。けど、焼き上がるとどうなるか楽しみだ。

←こんなのが出来ました。


濱ちゃん、ありがとう。

 

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