大 蔵 検 査by チャーリー岸田
※ これはやばい話ですが、会社の連中に言いふらしたり転送することは 自由です。どんどんやってください。 某銀行に、先般、大蔵省の検査が入った。通称「大蔵検査」、または「蔵検」(クラケン)などと略されることもある。
「おいっ」これが普通。まるで体育会系運動部で、上級生が一年坊主を呼ぶときと同 じ。 民間企業同士の取引では常識外の常識が通用している。役人にしても、役所内部でのストレスを、ここで発散しているのかもしれない。 しかし銀行員も、人に頭を下げるのは苦手な人種。銀行は大昔から、顧客が頭を下げて金を借りにくるのが普通で、支店長クラスになると、地域の名士扱い。元々顧客に頭を下げる習慣がない上に、数十年来の殿様商売が身体に染込んでいる。彼らにとって大蔵検査は、人生で最大の屈辱らしい。 今回の検査で24歳の役人が、ちょっとトンチンカンな質問をしてしまった。細かい内容は省略するが、エリートとは言え、社会人になって2年かそこいら、金融業務を知り尽くしているはずもない。
「いえ、これは金融機関では一般的に行われている方法であります。おそらく他の銀行さんでも同じような方法で処理しているはずです。」これが役人のエリート意識を逆撫でしたらしい。 「そんな事は聞いてないっ! どうしてこの方法にしたのかを聞いているんだ!」ここで、自分の息子のような年代の若造に怒鳴られて、A次長は少し切れてしまった。そして、口の中で、小さな声でつぶやいてしまったのだ。 「木っ端役人め。」ところが、これが役人に聞こえてしまったらしい。 しかし、その役人は さすがにエリート、手がブルブル震えていたものの、そこで逆上したりはしなかった。 その翌日、大蔵省の上層部から、銀行の頭取宛に書状が届いた。 「昨日の検査において、著しく不快感を催す発言があり、遺憾に思う。」翌々日、銀行からA次長の姿は消えていた。 朝礼の席で、部長から一言の報告がなされた。 「A次長は、一身上の都合により、昨日付で退職されました。」どうやら懲戒免職にはせずに、本人から退職届を提出させたらしいが、これが銀行にとって最大限の抵抗だったようだ。 おわり |