唐津くんち(1)by チャーリー岸田
-再会-
世の中には2種類の人間がいる。 「九州に濱ちゃんって言う面白いおじさんが居るんだけど、今度遊びに行かないか?」そんな突拍子もない話を聞いて、「よし、わかった!」の一言で航空券を買いに行ってしまうタイプの人間と、それをしない人間。 もちろん前者は少数派だが、少なからず実在する。そしてそう言うタイプの人間は一般社会から浮いてしまい、唐津くんちに集合することになる。 今回集まった連中は、基本的にそんな連中ばかり。お互いに初対面の関係が多いが、そんなことは全く問題にならない。 出発前、今回声を掛けたメンバーの一人、K氏から分厚い封筒が届いた。 「俺は行けないけど、楽しんで来てくれや。」と、福岡中州の風俗情報の載った新聞のコピー。 どうやらこの人は今回のツアーのコンセプトを誤解しているようだが、読むとなかなか笑える記事なので持って行くことにした。 しかし、この人は東京在住なのに、どうして福岡の風俗情報などを持っているのだろう? 唐津の濱ちゃんの家で「わはは!」などと言いながら、皆でこの新聞コピーを見ていたところ、今回参加したメンバーの一人、保っちゃんがふと一つの記事に目を止めた。
保っちゃんは大阪在住のヨット乗り。
彼の見ていた記事には、『火山灰でヨットを自作』の見出し。
保っちゃん「おっ! 俺この人知ってるぞ。」話を聞いてみると、このヨットを自作しているのは、保っちゃんが子供の頃、実家が経営する工場で働いていた職人さんらしい。そして30年前に郷里の唐津に帰って自分で鉄鋼所を始めたそうだ。 濱ちゃん「この人なら知っちょるバイ。そげんことならこれから会いに行くバイ。」そこに居た全員が、ぞろぞろとこの鉄鋼所に行くことになった。そして30年振りのご対面。 保っちゃん「どうもどうも、タモツです!」
つづく |