熱海 金魚飛ばし
by ダレヤメの焼酎を愛す男

 2度目に行った時には場所が判らず、お巡りさんに

「金魚飛ばしどこですか?」
と教えてもらったものでした。

 温泉街、柳の生える川のほとり、ブラックキャッツと看板が出ています。 入場料は少し高く、五千円です。小さな舞台に客席は20もあるでしょうか。私達6人が席に着くとミュージックといっても、カセットを自分で入れるのですが、音楽が始まります。

 そのお姐さんは客に向かって、かなり高度な政治の話とか、オリンピックの話を仕掛けて来ます。
私の知らない話も出て来て困りました。
これはどうも普通の劇場と訳が違います。
昔、始めて来たときは「お客さん、教頭先生?」と言われましたが、この時は外交官と言われ顔を赤らめ、そんなもんだと答えました。

 芸者さんと浴衣姿の泊まり客6人の団体が大騒ぎして入って来ました。もっと前の方にと、命令口調で姐さんに言われていました。

 お姐さんは昔、ハワイに巡業に行ったこともあり、テレビ出演もしたと聞いています。若い頃、随分稼いでゴルフ会員権も持っているようです。

 その芸は、ビールの栓抜き、クラッカー5連発、リンゴ切りとかで、なぜかその抜いたキャッツというワインのサービスがあって、それを飲みながら、いよいよ一番のクライマックスです。
5メートル程の距離に水の入ったバケツが置かれました。お姐さんは股を広げ、人指し指と中指で挟んだ金魚を頭の方から入れました。気合を入れ掛け声と共に股の付け根を右手でポンと叩くと、勢い良く金魚が空中で半回転し、見事に5メートル先のバケツに頭からポチャンと入るではありませんか。客席からは拍手喝采。舞台へ千円が舞ってゆきます。
この金魚は使い慣れたものを使うそうです。

 今迄、各地の温泉、劇場、香港の歓楽街などでも金魚飛ばしは見たことがありません。
しかし姐さんも年と共に飛距離が短くなったなあと感じました。

 あれから幾年か過ぎ、先日久し振りに熱海温泉へ行く機会があって、一緒に行った女子大生がストリップが見たいと言うのでタクシーの運転手に金魚飛ばしを聞きますと昨年で終ってしまったのだそうです。
そう言えば、姐さんもかなりな歳です。
熱海も終ったなあと寂しく感じたものです。

 どなたか後継者に。

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