エージング

by チャーリー岸田 & ショーケン 

[岸田]

 岸田の川崎の実家では、岸田の部屋は6畳間。木造家屋でもあり、オーディオアンプは小さなもので十分だったのですが、現在の生活環境では、もう少し高出力のアンプが欲しくなって来ます。

 そこで真空管アンプと言う構想が出て来ているのですが、現在売られている真空管アンプは、ハイエンドなマニア向けが大半。岸田もそこまでは要求しません。

 そこで、そこそこのキット制作はどうかと思っているのですが、ショーケンはオーディオ方面には強いですか?
 何かお勧めの機種などありましたら教えて下さい。

[萩原]

 高出力のアンプを買うお金があるなら、スピーカーの自作を薦めます。
メーカー製のスピーカーはスピーカーその物の性能に頼っており、箱で鳴らす思想になっていない。それにスピーカー自体の効率も悪いので、大きな音を鳴らすには高出力アンプが必要になります。ところが、高効率のスピーカーを充分な容量の箱で鳴らすと、小さなアンプでも信じられない程の大きな音が出せます。これは本当に感動するくらいの音が出ます。

 プレーヤーやアンプが良くても、最後はスピーカーで決まってしまいますので、この点を考慮される事をお薦めします。

[岸田]

 う〜む。なんて説得力のある説明だ。
 この路線で走ってしまうと、結局スピーカーの自作は避けて通れないことになるわけだ。非常にまずい。オーディオ環境は現状維持で行くことにする。

 キケンな世界にハマるところだった。

[萩原]

 スピーカーの自作に興味があるなら、手伝いますよ。予算的には4万円程度もあれば充分でしょう。
結構、手間かかるけど。


[岸田]

 やめてくれえい! 俺を悪の道にひきずり込まないでくれえい!
たったの4万円でできるってか。うわあああ! 誘惑しないでくれえ!

[萩原]

 少し解説します。
スピーカーってのは電気信号を音に変換するもので、音ってのは空気の振動。
つまり、空気を振動させるのがスピーカーの役割なのですが、スピーカー単体では前の空気と後の空気が干渉して大きな音が出せません。そこで、スピーカーを箱の中に入れてこの干渉を抑える必要があります。箱が大きいほど低音が出せるので、箱ってのは重要なのですよ。

 しかし、誰でも大きな箱を置くわけにいかないし、格好悪いので、メーカー品のスピーカーボックスは理想に比べると、恐ろしく小さいわけです。その分をスピーカーユニットの性能で補おうということですが、やっぱり大きな箱で鳴らしたほうが良い音が出せます。

 自作をすると、この点は理想的な箱を追求することができるので、メーカー品に出せない音(より自然な音)を出すことが可能です。

 スピーカーは生ものですから、「エージング」がかなりあります。初めは酷い音でも、鳴らせば鳴らす程しっくり馴染んで来て良い音になってきます。どうです?面白そうでしょう?

[岸田]

 つまり良い音を出すためにはでかい箱が必要ってわけだな。

 〜ってことは、箱の大きさがでかくできない場合は今の既製品より良いものは作れないってことだ。ああ残念だ!
半分自作願望が出てきたところだったけど、これであきらめがついたぞ。でかい箱なんて部屋に置けないからな。ああ残念だ!

 ところで、スピーカーの[エージング]について、もう少し教えて下さい。

  1. 鳴らすことによって、物理的には何が変るのか?
  2. 逆に、鳴らすことによって音質が低下する可能性も有り得るのか?
  3. 既製品のスピーカーにもエージングはあるのか?
いえいえ、ただ好奇心から聞いてみたかっただけです。自分で作るわけではありません。本当に単なる好奇心です。

[萩原]

 メカ物にはどんなものでもエージングがあります。
何がどう変わるかなんてわかりません。「なじんでくる」としか言えない。
また、使用しているうちに摩耗による劣化の影響で性能が落ちることも、もちろんあります。
既製品のスピーカーも大きな音でガンガン鳴らしていると、なじんで良い音になってきます。
(あくまで経験談。ある日突然、「あれ?こんなに良い音だったけ」と気が付く。)

[岸田]

 いやだっ! そんな説明じゃ納得しないぞっ!

 たとえば機械の場合、部品どうしの摩擦によってなじんで来ることは想像できるし、特にエンジンなどは油が回ることによっても違って来るだろう。
 だけどスピーカーのエージングなんて、どうなってるのか想像つかない。
 技術者らしく説明してくれえい!

 ところで、

「結婚したときは、とんでもない女だ。この結婚は失敗だった。なんて思ったけど、最近は馴れて来たせいか何も気にならなくなって来た。」
〜ってえのもエージングって言うんかい?

[萩原]

 うーん、説明が難しいなあ。

 なじんでくるんですよ。これ以上の説明はありません。

 あえていうなら、スピーカーボックスは木製なので楽器と同様、鳴らしているうちに最適な形状に変形してくるのでしょう。

 研究所にいたときの所長が、趣味でアルミ製のバイオリンを作っていましたが、「やっぱり木製にはかなわんなあ」と言っていました。ちなみにその人は日本でも音・振動の大家で、複雑な解析を駆使してそのバイオリンを設計した(ストラディバリウスと同程度の物を目指したらしい。)そうですが、結論としては、音のような生ものに対しては、木のような生ものが一番ってことになったようです。

 説明するとよけいにわからなくなってきた。

[岸田]

 ソフトウェアもエージングしてくれたら嬉しい。
設定値が少しくらい間違っていても、動かしているうちに段々馴染んで来る。ってのがあったら助かるんだけどなあ。

 それじゃあ、

「初めてJUSTに来たときは、エッチで下品な先輩ばかりで嫌だったけど、毎週会っているうちに馴れて気にならなくなった。最近ではむしろ、率先して下品な遊びに行くようになってしまった。」
というのもエージングのうちか?

[萩原]

 そうです。エージングのうちです。
人間、そうやってまるくなっていくのです。
人間の場合は「成長」っていいます。

あえて言うなら、率先はしてません。


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