はまちゃん結婚式報告(1)

by チャーリー岸田

part-1 七福神登場

 10月5日の金曜日、はまちゃん泉ちゃん結婚式のため、全国各地から出席者が濱田家に集まりつつあった。
 早速はまちゃんは、初めて唐津を訪れたメンバーを連れて櫻窯を案内。その中には泉ちゃんの所属する「七福神」チームのメンバーも含まれていた。

 今までもこのメンバーのうち何人かは櫻窯を訪れたことがあったが、彼らは比較的「侘び寂び」の判るメンバーであり、七福神チームでは例外的な存在である。その他多くのメンバーは、とても「陶芸」などを解するデリカシーは持っていない。
 窯に並んだ作品などには目もくれず、石垣をよじ登ったり吊り橋で暴れたり、単なる野生児振りを発揮していた。
 一通り窯の周りを見物した後、はまちゃんの作品の並ぶ工房に入った。

岸田「おっ! はまちゃん、これ良いじゃないですか! 良い感じに焼けてますねえ。」
 陶芸は炎の芸術である。同じ粘土を使って同じ釉薬を掛けて同じ窯で同時に焼いても、炎の当たり具合や温度の微妙な差にによって、出来上がった作品には大きな差が出る。

 炎の具合によっては、達人の作品が駄作になったり、素人の作品が大傑作になることもありえるのだ。またそのため、どれほどの達人でも全く同じものを二つ作ることは不可能である。それが陶芸の面白いところでもある。

濱田「おう、岸田君もだんだん判るようになって来たな。それ持ってってヨカよ。」
岸田「えっ? 俺が貰っちゃって良いんですか? こんなに良く焼けてるのに。」
濱田「ヨカヨカ。違いの判る人に使って欲しかけん。」
 それを横で見ていた七福神チームの柴田が、並んだ陶器の中から不意に一つの作品を取り上げた。
柴田「はまちゃん! これ良いっすねえ!」
濱田「えっ? そんなんで良ければ持ってってヨカよ。」
柴田「やりい!」
 どう見ても柴田には判っていない。彼にはあまりその筋の素養は無いようだ。岸田が一個貰ったので、真似をしてみただけだ。

柴田「やっぱりこれが一番だぜ。」
岸田「判ってねえなあ。」
柴田「それが判ってるんだよ。俺は最近お茶習ってんだ。バッチリだぜ。」
岸田「それじゃあ誰か別の人に、俺の選んだ作品と、どっちが良いか聞いてみようぜ。」
柴田「おう! そうしよう。余川さーん! どっちが良いですか?」
余川「こっち。」

 七福神ボースン余川氏の選んだ作品は、岸田が選んだ方のものであった。
柴田「余川さんも判ってねえなあ。」
 しかし、他の誰に聞いても、岸田が選んだ作品の方が傑作であることが明らかであった。
 柴田の選んだものは、他の多くの作品に比べて、特に優れたものでも何ともないのだ。
柴田「皆んな判ってねえなあ。」
岸田「柴田はまだまだだな。もっと修行を積んで見る目が出来たら、俺が貰った方と替えてやっても良いぜ。」
柴田「へへーんだ。そんな必要はないって。」
 その後濱田家に戻ると、そのまま自然の流れで宴会開始。後から三々五々新しい出席者が集合して来る。
 俺たちは貰った器に酒を注いで飲んでいた。
 そこで柴田は来る人毎に二つの作品を見せて、どちらが良いか聞きまくったのだが、全員が全員岸田の選んだ陶器の方が傑作であると言う評価を下す。
柴田「うーむ。」
 彼は二つの陶器を前にして、何か考え込んでいる。すると数分後・・・・・・
柴田「岸田っ! 俺にも『見る目』が出来たぞ! やっぱりそっちの方が良い。交換だ!」
岸田「何言ってるんだ。判ってねえくせに。皆んなが俺の選んだ方が良いって言うから、こっちが欲しくなっただけだろう?」
柴田「いや違う。俺はお茶を習ってるんだ。だからそう言うことが判るんだ。」
 それならば、どうしてさっきは凡作の方を選んだのだろう?
岸田「そんなはずはない! そんなに急に判るようになってたまるかっ!」
柴田「とにかく約束どおり交換だ。」
 柴田は嬉しそうに、無理矢理はまちゃん快心作のぐい飲みを持って行ってしまった。きっと今頃、それを妻子に見せて自慢していることだろう。
 「この良さが君たちに判るかな?」なんて言いながら。
 とりあえず、柴田家の家宝が増えたことだけは間違いない。

 以上

この人が柴田さん。私は会ったことないのですが

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