洗濯日和

by チャーリー岸田

 昨日も会社から帰るとすぐに洗濯を始めた。洗濯は必ず平日の夜に行うのだ。大事な休日を家事に費やす訳には行かないのだ。

 しかし、昨夜は疲れていたようだ。ポケットに煙草の箱が入ったまま、知らずに洗濯機に突っ込んでしまったようだ。洗い終わった衣類やタオル類その他一式は、グチャグチャになった紙と葉にまみれていた。

「あーあ。」
 俺は洗い終わった洗濯物から丹念にゴミをはがし、洗濯機の中も大掃除になった。そしてまた再度洗濯。これだけで深夜になってしまうが、まあ明日は休日だ。頑張って今日中に終わらせて、明日はゆっくり寝ていよう。

 そして翌日。目が覚めると外は雨だった。昨夜のうちにベランダに干しておいた洗濯物は全部グチャグチャ。朝寝坊しようと思って、前日からベランダに干してしまったことが敗因だ。

「あーあ・・・」
 俺は三度目の洗濯を始めた。

 昼前に雨は上がり、天気予報でも午後からは晴れるとの予報。今度こそちゃんと干してやる。洗濯物を干し終わると、会社から電話が入った。色々困った事態が発生しているのですぐに来て欲しいとのこと。
 まあ、今日は天気も良さそうだし、このまま出掛けても問題ないだろう。

 そして昼過ぎ、仕事が一段落し、職場の窓から外を見てみると、長崎港とその対岸に見える稲佐山が曇って見える。
 霧かと思ったのだが、太陽の光が乱反射していて、どうも霧とは雰囲気が違う。妙にに黄色っぽく見えるのだ。
 岸田は以前、日本で一番霧の濃い信州の伊那谷に住んでいたので霧は見慣れていたのだが、こんな雰囲気の霧は見たことがない。
 地元のメンバーが言った。

「あれは黄砂ったい。」(あれは黄砂です)
「黄砂!」
 岸田は初めて見た。今日は風も無く穏やかな天気なのだが、上空の気流に乗って中国の砂漠の砂が運ばれて来ていたのだ。
 地元の人から見れば色々やっかいな現象なのだろうけど、こちらに来てまだ一ヶ月あまりの岸田は未だに観光気分。「珍しいものを見られてラッキー。」ってな気持ちで眺めていた。

「洗濯はやり直しっちゃね。」

 たしかに、この霧が全部砂であれば、洗濯はやり直さざるを得ないだろう。
 しかし大丈夫だ。俺は以前「カカア天下と空っ風」で知られる上州にも住んでいたことがある。冬になれば吹雪か砂埃のどちらかの天候しかない。吹雪に遭ってしまった洗濯物は救えないが、砂埃な大丈夫だ。ナイーブな人や花粉症の人には無理だろうが、洗濯物の砂埃は叩けば気にならない程度に落ちるのだ。取り込む前に布団叩きで叩いてやれば良い。

「黄砂にはそれじゃいかんっちゃ。黄砂はパウダーごたる細かか砂ったい。叩いても落ちゃせんたい。」
 そうか、たしかにパウダー状の細かい砂であれば叩いても無理だろう。また洗い直すしかないのか。  
「あああああ・・・・・・」
同じものを続けて4回も洗濯するのか。黄砂だけは予想できなかった。

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