伊王島
by チャーリー岸田
昨日の土曜日は出勤だったので、日曜日は午前中部屋の掃除とスーパーマケットへの買出し。
午後からは出島ワーフに出掛け、海岸のデッキでランチ。
特に予定のない休日は、こんな感じで時が過ぎる。
まるで「わたせせいぞう」の世界ではないか。
職住接近が豊かな生活のキーワードである。豪邸に住んでいても、毎日の通勤に100分も掛かるようでは、それは豊かな生活とは言えない。
その点、長崎は便利である。
職場や出島ハーバー、大波止のフェリー乗り場や長崎の各観光地の大部分が徒歩10分圏内にある。海に面したボードウォークでのランチも、サンダル履きで気楽に行けるのだ。
長崎はのんびりした土地柄で、出島のオープンカフェも、注文してから料理が出て来るまでやたらと時間が掛かるのだが、海を眺めていれば、そんなことは気に掛からない。
昼飯後、大波止のフェリー乗り場に行き連絡船の時刻表を見てみると、何とこの港から伊王島までたったの19分で行けるではないか! そのまま乗って行くことにした。
何度も言うが、この気楽さが地方都市の魅力である。
たとえば東京に住んでいる人が、どこかの観光地に行く場合、「よおし! 明日は××に行くぞ!」と、前日からモチベーションを高め、当日は早起きして出掛けなければならない。
それに比べてこの長崎では、午後からフラリと島に渡れてしまうのだ。
伊王島は、青い海と白い砂浜以外、何も無い島だった。そしてこれは離島に共通した特徴なのだが、恐ろしく人間が少ない。そりゃそうだろう。
九州本土では、その土地に用の無い人でも、別の場所に行くために通過する人が居る。しかし離島では、その土地に住んで居る人か、またはその土地に用のある人しか居ない。そして、その両方とも非常に数が少ないのだ。
フェリーを降りると、フェリー乗り場前に一軒だけある雑貨屋に『貸し自転車』の看板を見つけた。2時間で\300だ。早速その自転車を借りて島内探索に出掛けたのだが・・・・・・
これが非常に辛い。長崎およびその周辺の島々は、地形が急峻で、やたらと坂道ばかりなのだ。横目で海を眺めながら、ヒーヒー言いながら坂道を登った。人も車も全く通らない。
高台にある灯台を目指していると、車道の真ん中に、短パンに上半身裸でひっくり返っている愚者が居た。もしも車が通ったら(その可能性は低いが)、そいつはそのまま轢かれてしまうではないか。
「ばかめ。」と思いながら通り過ぎようとしたら・・・
「あれっ? 岸田さんじゃないですか。」
その愚者は、岸田の会社の若手(23歳)だった。彼も岸田と同じように、長崎に居る間に周辺を観光しようと毎週辺りをうろつき回っているようだ。
「その自転車、どうしたんですか?」
「フェリー乗り場の前で借りたんだ。」
「えっ? 貸自転車なんて有ったんですか?」
ちゃんと注意深くチェックしないから、徒歩で島内巡りに出掛けて途中で倒れることになる。愚者め。
「それじゃあ、俺は先に行くから。」
「待って下さいよう!」
岸田はやつを無視して涼しい顔で通り過ぎたのだが、実はこちらも大変だった。こんな急な上り坂では、徒歩も自転車もきついことに変わりはない。
結局岸田もヘロヘロになって島を回り、夕方フェリー乗り場の防波堤で伸びていた。
そこに先ほどの当社の若手が汗だくになった登場。
「いやあ、今日は参りましたよ。」
参ったのは岸田も同じだ。しかし、帰りの連絡船の中で飲んだビールは最高に美味かった。
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