ピマーイ探険記(1)

by チャーリー岸田

旅のはじまり

 2003年9月、JUST七福神合同のピマーイ探険が実施された。

 「ピマーイ」とは、タイ東北部のカンボジアに近い土地。大昔、この地は長い間クメール人(カンボジア人)が支配しており、クメール人が作った王宮の跡があると言う。タイ国内にありながら、タイの王宮とは様式の異なる、アンコールワットと同様のクメール様式の建造物が残されているのだ。

ピマーイの遺跡

 本来であれば、我々はカンボジアまで足を伸ばしてアンコールワットを探険したいのだが、ビザやスケジュールの問題で断念せざるを得ず、今回はその手前のピマーイ遺跡の調査となった。しかしまだあまり日本人が訪れていない地域である。

 19日、岸田は成田空港で同行のK先輩を待っていた。しかしK先輩は例によって飛行機の離陸直前に駆け込んで来ることが目に見えている。そこで岸田は事前に二人分の席を確保しておくことにした。

岸田 「非常口席取れますか?」

 『非常口席』とは、飛行機のドアのすぐ後の席で、離着陸時にキャビン・アテンダントと向き合う席のことだ。
 タイまでの7時間、前席の背もたれに圧迫される狭い席では体力を消耗し、これからの過酷な探険活動に支障を来す可能性があるため、足を伸ばせる非常口席を確保する必要があったのだ。

係員 「今のところ空いていますが、この席は非常時の脱出の再にクルーの手伝いをしてもらうことになります。」
岸田 「はい、大丈夫です。それなら任せて下さい!」
係員 「アメリカの航空会社なので、非常の場合英語で指示を出すことになりますが、英語の方は大丈夫でしょうか?」
岸田 「だ・大丈夫です。」(実は全然大丈夫ではない)
係員 「もう一人の方も英語は理解できますか?」
岸田 「ええ、彼も英語はペラペラです。全然OKです。」(これも実はまずい)
係員 「それでは、離陸前にキャビン・アテンダントから非常時の説明を英語でさせて頂きます。そしてその説明が理解できないようでしたら、席を替わって頂くことになりますが。」
岸田 (ひぇ〜っ)「だ・だ・大丈夫です。」

 ユナイテッド航空はテロに対して敏感になっているようで、日本の航空会社に比べてこのようなチェックが厳しいようだ。
 飛行機に乗り込むと、やはりK先輩はドアが閉る直前に汗だくになって機内に駆け込んで来た。そこで日本人のキャビン・アテンダントからやたらと早口の英語の説明があった。

岸田 「OK! OK! OK! OK!」
K先輩 「Yes! I see!」

 我々は何も理解できなかったが、とりあえず席を替わるようには言われなかった。関門はパスしたらしい。

 離陸時、我々が「あああ、間に合って良かったぁ〜」などと話していると、向かい側のキャビン・アテンダントが驚いた顔で話し掛けて来た。

「あら、お客様は日本の方だったのですね。それなら非常時のご説明も日本語ですれば良かったですね。申し訳ありませんでした。どう見ても日本人には見えなかったものですから。」
 どうやら先ほどの早口英語での説明は、実は英語のテストでも何でも無かったようだ。指示を出すキャビン・アテンダントが日本人なのだから、非常口席の客が英語を理解しなくても何ともなかった訳だ。

 しかし、俺たちは何人に見えたのだろう?

つづく

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