KENWOOD CUP1996 (Vol.1)

byショーケン

  この文章は日記と記憶を頼りに再構成したものです。
1996年のKENWOOD CUPは、俺にとって初めての海外レース参加。しかもそのシリーズ中に自分の結婚式までやったので、一生忘れることが出来ないレースとなりました。ここしばらくヨットネタがないので文章にしてみました。

8/3
 

 ホノルル空港に着いたら現地は朝であった。感覚的には恐ろしく早起きした状態だ。飛行機の中でほとんど寝ていないので、頭がボーっとしている。これほど長い時間飛行機に乗るのは初めてなので、はしゃぎ過ぎたのかもしれない。バスでホテルへ向かう。JUSTの他のメンバーはレンタカーで違うホテルだ。
一応、俺達は新婚旅行なので、ホテルは他のメンバーとは違う、イリカイホテルに宿泊だ。ロケーション的にもハーバーに近くて恵まれている。
 ホテルに着いてすぐ、滝ちゃんと2人で結婚式の打ち合わせに「ワタベ」ホノルル店に行った。そこで服の打ち合わせなどを行う。滝ちゃんのウェディングドレスは日本から持ってきたが、俺はここで借りなければならない。花嫁の服まで選んでいたら、1日かかるのではないだろうか?とにかく、店が広くて服が沢山ある。あと式の段取りなどの打ち合わせが続き、帰って食事したりすると3時をまわってしまった。
 ハーバーへ行ったのはその後。JUST SEVENはワイキキヨットクラブに係留されている。イリカイホテルからは歩いて6分くらいだ。かなり大変な事になっていた。安全検査もパスしていないようで、やらなくてはならない事は山のようにあるようだった。まず、Head Quarterへ行ってウェイトイン、それから整備に参加した。「おい、ショーケン、ジャックステーのシート買ってこい」と言われてアワライマリンへ行く。おいおい、英語なんて話せないぞ俺、なんてドキドキしながら買いに行ったが(しかも店は閉まっていて、裏口から入って用件を言わなければいけなかった)、意外に通じるものだ。
 こうして、ハワイ1日目は過ぎていったのだった。

8/4
 

 今日も整備の日、というか、インスペクションが続く。朝から検査員2名が艇に来て船の安全備品をチェックしている。最初の検査で注意されたのは、予備アンカーチェーンの長さが足りない、バッテリーの固定が十分でない、海図が1枚足りないなどであった。それで、買い物して、午後にはOKになった。
船の仕上げがかなり悪かったので大変であった。それにしても英語が話せる人がいないと何も出来ないと感じた。いやー、頼りになる先輩方々がたくさんいて良かった。
 さて、午後になって、ようやくセイリングが出来る状態になった。明日からいよいよレースなのだ。噂にきくハワイの風は、波は、どんなものなのだろう?
 ハーバーの外に出てみると、かなり波と風がある。海の色はパンフレットに載っている写真そのものである。No.3を展開してハワイの海を走るのは、我々の乗り慣れたJUST SEVEN。目の前にそびえるのはダイヤモンドヘッド。そして海岸線はワイキキのホテル群。ピンク色の有名なホテルが際立って見える。ハワイの海を帆走しているのだ。でもデッキ上は見慣れた風景。何か信じられないようだが、夢ではないのだ。
 風が落ちて来たのでNo.2にチェンジする。良い感じだ。しかし、ハリヤードに若干トラブルがあり、早く帰港して整備する事になった。このシリーズ、ハリヤードトラブルに泣かされることになるのだが、この時は知るはずもなかった。

8/5
 

 第1レース
 

 KENWOOD CUP初日。クラスはAからEまでの5クラスに分けられている。我々JUSTはDクラスである。Dクラスが一番小さい艇のクラスで、我々がその中でも最小艇、レーティングも一番低い。また、日本艇は、このDクラスが最も多かった。まず、同じ名古屋から参加のTake-1、ニュージーランドから来たばかりの最新鋭艇だ。このポテンシャルの高い艇にショアセイルの石川氏を始め、東海水域のトップセイラーが乗り込んでいる。我々JUSTと同じ日本ホワイトチームだ。きっとチームのポイントゲッターになってくれるであろう頼もしいチームメイトであると同時にライバル艇である。日本ホワイトチームは、この2艇に名古屋から参加のもう1チーム、チームガッツ、艇はX-Dream( X-119、チャーター艇)の東海チームである。 あと、諸磯から来たチームが赤いX-119「ペレストロイカ」、シーボニアのチームがJ-35を2艇チャーターして参加していた。以上がDクラスの日本艇だ。忘れているチームがおられたら、ごめんなさい。
 さて、レースは11時スタート。Aクラスから5分おきにスタートする。Dクラスのスタートは11時15分である。
 レース海面に向かう。かなり緊張している。本日の俺の相棒のマストハンドは横田氏である。レース艇がレース海面に続々と集まってくる。どの艇もすごくカッコイイ。そりゃそうだろう、最新鋭艇がズラリと並んでいるのだ。一際目を引くのがAクラス、ILCマキシだ。こいつらはとにかくデカイ。ACボートよりデカイ。乗っている連中もクリス・ディクソン、ポール・ケイヤードと言った超一流の乗り手ばかりだ。同じレースに出るライバル艇のはずなのだが、観客のようにすげー、とかカッコいーなー、と眺めてしまう。こういう世界のトッププロと我々のようなアマチュアが一緒の競技に出れるスポーツはヨットぐらいではないだろうか?
  Aクラスのスタートが近づき、マニューバリングが始まる。こちらはスタート20分前だが、完全に観客になっている。いやー、すごい。A、B、Cとスタートして、いよいよ我々のスタートが近づく。
  セイルはNo.2かNo.3か迷っている。メーターのウィンドスピードはNo.3の風域を指しているが、No.2で走れるのではないか、との議論がデッキ上で交わされる。この海面でのセイリングが不足しているので、「これだ!」とはナカナカ判断できないのだ。
 No.3に決定。スタートラインに近づく。基本的にマキシが出れるようなラインなので、Dクラスの我々にとってはラインの広さは十分である。各艇とも、あまりラインに寄らず、リコール艇はなし。我々は結構上側から出た。春のミドルボートのメチャメチャなスタートと比べると整然としたスタートだ。
  スタートしてしばらくスターボで走る。なんだかパワーがない。スピードもイマイチ。波を乗り越える時は波に負けている感じがする。と、上マーク付近ではマキシがもうスピンをホイストしている。速えええーー。
 我々は遅い。J35にも負けている。5分遅れでスタートしたEクラス、マム36にどんどん抜かれる。何ということだ。上マークまではすごく遠い。2マイル以上あるソーセージコースなんて始めてだ。上マークでの スピンホイストは問題なし。しかし、ジブハリヤードがなかなか解除できないので、ジブダウンがもたつく。このレースのためにハリヤードを交換したのだが、クリートにガッチリかみ込んでしまうのだ。ジブダウンの度にピットマンがウインチでテンションをかけてクリートを解除しなければならない。ピットマン新美氏は大忙しだ。
 さすがにスピンでの走りは速いと感じる。ジャイブはまあまあ上手くいった。ジャイブ中にレイジーを入れようとしたら、パロットビークルが閉じない。ゲッ、なんで?と、後ろを見ると横田氏が解除シートを大事そうに引っ張っておられる。思わず「なにやってんだ!早く放せよ!」なんて怒鳴ってしまった。万年下っ端の俺に怒鳴られてアタフタしている横田氏の姿が、他のクルーには面白かったらしい。後で語りぐさになってしまった。
クルーワークで大きな問題なかったが、ボートスピードは伸びず、クラス9位。

第2レース

 ヘッドセイルをNo.2にチェンジする。それでセイリングしてみるが、ヒールもそれほど大きくなく、よく走っている。やはりセイルはNo.2で正解だったようだ。風は強いけど、ドライなので、それだけ風のパワーがないのだ。
 スタートも第1レースと変わらず、各艇の場所があらかじめ決まっているかのような行儀の良いスタート。ラインに対しては安全目のスタートだった。第1レースで感じたパワー不足などはなく、今度はそこそこのところを走る。デッキ上も大きなトラブルはなく、セイルはチェンジなしで、ずっとNo.2で走る。このレースはクラス6位。

レース初日はボートスピードに難あり、という印象であった。現地でのセイリングが不足しているので、仕方がないと言えばそれまでだが、不安が残る初日だった。

つづく

On the WAVEのトップへ戻る
HOME