JAPAN CUP 1997 (vol.4)

by ショーケン

10/26

 朝、「麻規」のクルー用ベッドで目が覚めた。起きたのは6時だったが、昨夜泊まった他の3人はもう起きて、くつろいでいた。朝食をとりながらテレビを見ると、今日は12月初旬の気圧配置で、かなり冷え込むと言っている。風も昨日同様、かなり吹きそうだ。
 この日は萩原は待機のはずだったが、マストハンドの体調不良で代わりに乗ることになった。レース前に、風が強くてセイルが重いけど、速くホイストしてくれよと言われて緊張する。1レースくらい何とかなるだろう。
 風は西の風、25〜30ノット、昨日の午後と同様、Y旗があがる、「ライフジャケットを着用せよ」。動きにくいが、多少暖かくなった。もう、既にスプレーを浴びてずぶぬれだ。耳の中にも水が入っている。

第7レース

 本部艇すぐ近くでスタート、上に1、2艇走っていたと思う。すぐタックして右にのばす。
ほとんどの艇は左に、右に走っているのは「タック」「アオバ」「ドンキー」「マリオ」等、数艇のみ。
少し波があって上マークを発見するのは困難だ。上マークまでマム36の集団について行った。他のIMXは後ろ。
ヒッチマークを回って、スピンホイスト、これはうまくいった。ジブダウンしている間に「レディートゥジャイブ!」の声がかかった。あわててレイジーシートをたぐってバウマンに手渡してジャイブ、それからセイルを束ねた。
下マークまではそのまま、位置も変わらず。ジブをホイストして、普通のスピンダウン、これもきれいに決まって、萩原はハイクアウト。
その時、バウの田村さんが「ああ!ポールが」と言うので、見るとポールの根本(マスト側)がポッキリ折れている。
金具とカーボンのパイプの間のプラスティックのパーツが、せん断破壊してしまっている。
まだ2回もスピンランが残っているのに、何ということだ!(予備ポールは無い)

 一瞬、バウの2人とも目の前が真っ暗になったが、とにかく、落ち着いて対処するしかない。
萩原はまず、スピンパックに降りた。パック完了して、バウと2人で応急修理を開始した。
ピットマンのヒサシさんとマーティンのアドバイスで、金具とポールの間を引っ張るようにシートで縛りながら、シートが滑ってテンションが抜けないようにテープを巻いていく。タックする度に、田村さんはポールを持って、萩原はガムテープを2つ抱えて反対サイドに移動した。
 

 なんとか修理完了、前を見るとマークは目の前だ!しかも、ギアはスターボサイドでブラブラしている。
バウマンがすぐにスピンセットする、なんとかギリギリ間に合い、マーク回航してスピンホイスト、ジブダウンも終わらないうちにジャイブ、またこのパターンだ。周りを見ている余裕は全くない、風は少し落ちて22〜25ノット。
 

 そのままジャイブなしで下マークへ。次のジブをセットする。上げようとすると、ハリヤードがすごくかたい、何かおかしい、見るとヘッドフォイルの途中でジブが噛み込んでいる。少しダウンすると抜けそうなのだが、かなりがっちり噛み込んでいて、バウマンが引っ張っても抜けそうにない。しかし、下マークはすぐそこだ。
すぐ萩原もバウに移動して、2人で「せえの!!」と呼吸を合わせて引っ張った。4回目か5回目で抜けた。
すぐハリヤードについてジブホイスト、8割上がった所でスピンダウンになり、バウマン一人がなんとかスピン取り込みを開始している。
ジブが上がり切って、すぐに萩原もサポートして取り込むが、既にスピンは少し水面に落下しているようだ。
腕がパンパンになっていて力が出ないが、バウマンの「GO、GO、GO!!!」と言う声に励まされるように、なんとかバウハッチに押し込んだ。
 

 スピンパックしてハイクアウトにもどる。周りには、相変わらずマム36の艇団がいるが、少し後ろにY-33s(たぶん「SAMMY」)が追い上げて来ている。気が抜けない。上マークを見ると「ファウンデーション」がジャイブセットで回航している。「次のスピンセットはどうするんだ?」と聞くと、ベアウェイセットだと言うので、準備する。ホイストして即ジャイブが入るのは間違いない。
 

 スピンホイストしてジブダウン、すぐにジャイブ、さすがに3度目なのでちゃんと準備していたので余裕があった。風が少し落ちたので、ジブをパックしようかと聞くと、ダンがそのままスターボサイドに置いておけと言う、ジブチェンジはないようだ。
 

 下マーク手前でジブを上げる、が、またさっきと同じだ。また噛み込んでしまった。タフラフの入口付近が割れていて、具合が悪いらしい。
また萩原がバウに行って2人で引いてみるが、今度はビクともしない。
「切るしかないですよ!」と言うがはやいか、バウマンがナイフを抜いてジブの引っかかっている所を切り抜いた。
反対側のレールで上げようとするが、ジブの切った部分が残っていて反対側のレールが狭くなっているらしい、なかなか入らないようだ。
ダンが「何やっているんだ!ジブは何故上がらないんだ!」と叫ぶ。もう下マークまで来た。バウマンは必死でフォイルに入れようとしている。たのむぜ、これで最後の上りなんだよ、とでも言わんばかりだ。
 

 とにかくスピンダウンだ!萩原がバウハッチを開けて、一人で取り込み始めた。(ハッチの中にもう一人いるので、一人というわけではないが)ジブも少しづつ上がり出している。
 冷や冷やものだったが、この上りレグでフィニッシュだ。少しづつ風は落ちている。セイルチェンジは出来そうにないので、ヤバイ。
しかし、右に行くと強いブローが入り、No.3でもヒールがきつくなった。なんとか、そのまま無事にフィニッシュ。
 

 このレースはクラス5位になり、トータルでクラス2位が確定した。「ファウンデーション」には勝つことが出来なかった。
 総合成績は「アオバ」「ドンキー」「カラス」「エスメラルダ」「ファウンデーション」「MAKI」の順。総合で6位でした。やはり、「アオバ」がダントツでトップ。ちょっと、コイツらには勝てそうな気がしないです。
 さて、レースが終わって岡崎に帰る時、小田オーナーにお礼を言うと、

「また乗りにおいでや。来年には新艇がはいるからな。」
「新艇では、何かレースに出るのですか?」
「とりあえず、来年は鳥羽や。ジャパンカップも出るで。名古屋の艇が暇やったら遊びにおいでや」
と言われて、西宮を後にしました。ありがたいお言葉です。「MAKI」チームは、11月は広島のSKK CUPに出るそうです。きっと素晴らしい結果を残してくれるでしょう。どうもお世話になりました。また乗せて下さい。よろしくお願いします。

おわり

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