Phuket King's Cup 2000 (3)by チャーリー岸田
part-3 「ロイヤルネイビー」
12月4日、第1レースが開催された。
しかしこの日は朝から無風で、スタートは風待ちの延期。
カタビーチ沖のブイを回り、南のKohHi島を目指す。その途中で風が落ち始めた。この海域では、午前中はそこそこの風が吹いているものの、昼過ぎには必ず風が落ちてしまう。午前中の風のある時間帯にフィニッシュできなければ、後は日没後の陸風を待つしかなくなる。
俺たちは灼熱の中、KohHi島に向かって走り続けた。昼前からどんどん風が落ち、島は遅々として近づいて来ない。昼過ぎ、そろそろこの付近にフィニッシュラインが設定されても良い頃だ。レースを成立させるためには、KohHi島の手前でコース短縮させる必要があるだろう。
プカプカと潮に流されるようにKohHi島を回ったところでタイミリミット。コース短縮はなされなかった。オーシャン・マルチハル・クラスはトップ艇もフィニッシュしていないため、このクラスのノーレースが確定した。
その夜のパーティー。 「マルチハル・クラス第3位。SummerSalt!!」何だ?どうして俺たちが表彰されるんだ? 司会者の話を聞いてみると、第1マーク回航の修正順位で「第1マーク賞」を設けたようだ。 そうか、せっかく用意したトロフィーを、渡す相手もなくコミッティーが持っていてもしょうがない。とりあえず賞を作って渡してしまおうと言う発想だ。お祭りレースの「ベスト・ドレッサー賞」みたいなものだ。 しかし、せっかくくれると言うものを、断る理由もない。我々はステージに上がり、トロフィーを受け取った。 翌日、第2レース終了後、レース本部に成績を見に行ってみると、未だレース結果は張り出されていなかった。 「この調子じゃあ、結果が出るのはパーティー直前だな。」タイでは急がないのが基本だ。 ふと掲示板を見てみると、なんと第1レースの結果が出ている。 「なんだこれは?第1レースはノーレースになったはずではないか?」コミッティーは、ノーレースになったはずのレースを、第1マーク回航順位で結果を出し、後から成立させてしまったのだ。 こんな馬鹿なことがあってたまるか? それがあるのがKing'sCupだ。このレースは何でもありだ。 本来であれば、ここでコミッティーに抗議を出して、ノーレースを主張するところだが、我々の成績は3位。このまま放っておいた方が得かも知れない。 しかし、成績表を良く見てみると・・・ 「SummerSalt : 5位」なんだなんだ!これは!どうして3位で表彰された俺たちが、その翌日には5位になっているのだ? 原因はスタート時刻の間違い。このレースはスタートが延期されて10:30にスタートしたのだが、成績は予定どおりの9:20スタートで計算されている。そのためレース時間が長くなってしまい、レーティングの低い後続艇が有利になってしまっているのだ。 さて、どうしたものだろう? ここはノーレースを主張するのではなく、スタート時刻の間違いに抗議する方針で行くことになった。その方が確実だ。 抗議は簡単に受け入れられ、我々はあっさりと3位に帰り咲いた。 アバウトである。タイ海軍は非常にアバウトな規律で行動しているようである。きっとこの海軍は、戦争になったら弱いだろう。
しかし、他のレース参加艇はこの結果に対して何を考えているのだ? |