三河湾ヨットレースby チャーリー岸田
その日、三河湾はベタ凪だった。
話が煮詰まって、これ以上の展開は避けたいと誰もが思い始めている頃、漸く風が吹き出し、クラス旗掲揚。 「タックだあ! ここでタックだあ!」今年学連から流れて来た、ディンギー乗りの石川が叫ぶ。 「ちょっと待て。この船はディンギーじゃないんだ。そんなに細かくタックしていたら、艇速が止まっちゃうぜ。」先行するエルドラドは振れタックを繰り返す。 結果的に石川のコース選択が正解であった。今日の振れまくりの風では、振れタックが最重要項目であったのだ。 我々はエルドラドに遥か先行され、挽回が難しい状況であった。 「でも。エルドラドはレーティングが上だ。これから差を詰めれば、まだまだ行けるぜ。」我々は極力エルドラドとは別のコースを選び、逆転を狙った。 しかし、エルドラドのコース選定は着実だ。その差はジリジリと引き離されて行く。 そして最終レグのスピンラン。 なんと、遥かに遅れてスタートした同型艇のペルシェが、ジリジリと距離を詰め、すぐ真後に居るではないか! (まずい! 艇速ではあちらが上だ。やはりMUMM36に乗り慣れている彼らに一日の長がある。このままでは抜かされる!)ところが・・・・・・ ここでペルシェがジャイブ。我々と同じコースを採っていたのでは抜くことができないと考え、賭けに出たようだ。 しかし、パフのラインから見れば、このコース以外に考えられない。 我々はペルシェを抑えに入らず、当初のコースを進んだ。 結果は成功。ペルシェに僅かな差を付けてフィニッシュ。 ペルシェは、どうしてあそこでジャイブしたのだろう? そのまま順調に行けばJUSTを抜かせたかも知れないのに。 おそらく彼らは、我々を過大評価していたのだろう。 同じコースを採っていては、先行する我々を抜かすことが困難であると考え、敢えてギャンブルのコースを選んだのであろう。 昔からJUSTは、「エリカカップ」などの目立つレースでの成績が良い。 そこで三河湾では、JUSTが実力以上に認識されている傾向がある。そこでハッタリの通用する余地が生まれているのだ。 そのため、ラルのコースを選んでしまったペルシェを、若干引き離してフィニッシュできたと考えられる。 最終結果は、ベストコースを見極めたエルドラドが優勝。 レーティングの低さによって、J/24が二位。 我々は三位となった。 同型のベテランチーム「ペルシェ」に勝ったことは嬉しいが、これは相手方のコースミスによるもの。今後は通用しないだろう。 我々には、更なる精進が必要である。 以上 |