JAPAN CUP 1997 (vol.2)

byショーケン


10/17

 レース2日前にダンと相棒のマーティンが西宮にやってきた。
彼は上架されている「MAKI」を見るなり「こんなボトムじゃダメだ!マストも曲がっている。チェッカーもこんな細いシートじゃダメだ」と艇をいじり始めた。しかし二人ともジェントルな男で、片づけも自ら進んでやってくれたし、とても人当たりがよかった。
 レース当日、二人が桟橋に係留されている「MAKI」を見るなり、「プロペラにビニールが絡んでいる」と言い出した。そんなアホな、とハリヤードを隣の桟橋のクリートに引っかけて艇を傾けてみると、驚いたことに本当にビニールが絡んでいた。なんでわかったんだろう?
 
第1レース

 風は6〜8ノット、南東の風だ。ゼネリコ3回のあと、4度目でスタート。「MAKI」は一番上を狙って本部艇のすぐ横でスタートラインを切った。すると、すぐ上側、「MAKI」と本部艇の間に「エスメラルダ」がスピードを上げて突っ込んできた。これには驚いた。例によって「あほー!!何考えとんじゃー!入られへんどー」と罵声が飛んだが、エスメは本部艇スレスレでスタートしたのだった。エスメもMAKIと同じ所を狙っていたのようで、2度目のゼネリコの時は少しぶつけられた。レース後、エスメのクルーが謝りに来たが、ケン・リードは顔に似合わず過激な操船をするそうだ。
 スタート後、すぐタックして右に出す。ボートスピードは良い。いつもに比べて上っているらしい。トリマーが「どうなってんの?」と不思議がっている。スピードをつけてセイルの揚力で上っているのだろう、とか波を利用して上らせているとか、怪しげな意見がでるが、よく分からない。ダンがうまいということなのだが、謎を解くのには時間がかかりそうだ。
 2回ほどタックして、まだBクラスの艇はかたまっている。Aクラスはコレル45やカラスなどの大型艇が、かなりマークに近づいている。やはり、速い。1上はマーク回航の混乱を避けるため、マークを回ってからヒッチマークを回って下マークに行くことになっている。上マークを回ってスピンホイスト、ジェノアダウンしていたら、すぐヒッチマークだ。ジャイブする。「MAKI」は他のIMXやY-33Sと接近して走っている。Y-33でも小松選手の乗る「SAMMY」は、かなり先行、「MAKI」は同型艇「きねきね」「サマーボーイ」とほぼ同じ所を走っている。下マークは「ドンキー」が先行、続いて「アオバ」。
 ダンが、おまえらのスピントリムはタイトだ、もっとスピンを丸くはったほうがいい、そのほうが艇が揺れなくていいんだ、と言っていた。
そういう間に下マークに来た。アーリーポートでマーク回航、周りの顔ぶれは変わらず。先行している大型艇との間はけっこう空いている、こういう軽風ではIMXは不利なのか。しかしこんな風の中でもダンはよく艇を走らせている。「きねきね」に先行するが、上マーク付近で、すぐ下側でタックされた。ダンはこのパターンに弱いらしい、全てこのパターンで食われてしまった。
 2上では「きねきね」に2艇身ほど遅れて回航、「サマーボーイ」は「MAKI」より後ろ。しかし、「MAKI」はジャイブで初歩的ミスから、もう一艇のIMX「ウィズダム」に抜かれた。さすがにダンも怒ったが、あとはミスは無く少しづつ「ウィズダム」を抜き返す。大型艇は既に下マークを回航して上りレグに入っている、「ファウンデーション」は「カラス」「エスメラルダ」より先行、これはすごい、一方、同型艇の「TAKE-1」は、まだスピンで走っている。
 下マークでは「きねきね」に2艇身遅れてアーリーポートで回航、「ウィズダム」「サマーボーイ」と続く。「ウィズダム」「サマーボーイ」は左に、「MAKI」「きねきね」は右に分かれた。どっちが正解だ?レースは5上フィニッシュに短縮された。仕事のないバウ萩原・マスト吉村はダウンビロー、フィニッシュまでの様子はよくわからなかったが、ダンが艇をじわじわ上らせて「きねきね」に対して5艇身の高さを稼ぎ出したらしい。「MAKI」「きねきね」の順でフィニッシュ、「サマーボーイ」は遅れた、右が正解でした。
 このレース、Y-33がよく走り、上位に入った。「MAKI」はクラス9位、総合14位。トップは「ファウンデーション」。ちょっと先が不安になる第一レースでした。

10/18

第2レース
 

 このレース、萩原は観覧艇「サマーガール」からレース観戦。久しぶりに愛用のコンタックスに400ミリのレンズを取り付けた。
 今日は西の風12〜16ノットぐらい。少しずつ南に振れている。スタートは2回のゼネリコの後、スタート。ほとんどの艇はすぐタックして右に、「ファウンデーション」「サマーボーイ」は左に伸ばす。上マークは「アオバ」「ドンキー」の順で回航。Bクラスは「ファウンデーション」がトップ回航、右に行った「テイク1」も少し遅れて回航。今日はそれほど悪くないようだ。
 観覧艇からはあまりレースの細かい様子はわからない。「MAKI」は第一上マークへのアプローチで少し高さが足りず、2タックして回航、この混乱でスピンホイストがもたついたが、位置的には良いところにいる。すぐ前は「マリオエキスプレス」「カリーニョ」などのマム36軍団、IMXのなかではぶっちぎりのトップ、この風ではIMXはなかなか良いところに入れそうだ。それにしても、コレル45の「アオバ」は本当に速い。「ドンキー」を大きくリードしてフィニッシュ。今日はY-33S軍団はあまり調子良くなかったようだ。「MAKI」はスピンが少し破れるというトラブルや、スタート前(2度目のゼネリコの時)に他艇に当てられてスタンションが折れたりしたが、順調に走りきり、クラス2位。1位は「ファウンデーション」。

第3レース
 

 第3レースは西宮沖のブイと淡路島の洲本沖ブイを2周する「大ソーセージコース」。全行程100マイル少々、得点は1.5倍になる。この季節、風が落ちるので、コース短縮になるだろうという評判だった。
 スタートは16時、各艇、午前中のレースの後にハーバーに戻り、準備をしてからのスタートだ。萩原はこのレースは乗れることになっている。
 レースはゼネリコもなく、順調にスタート、「ドンキー」がリコール。しかしそのまま解消しないで走ったため5%のタイムペナルティをもらうことになった。
 風は南西、12〜16ノット、何度かのタックの後、西と東に分かれた。「MAKI」はほとんどの艇と同様、東に出した。スターボードタックでクローズホールド、全員でフルハイク、日は少しづつ落ちている。ヘッドセイルトリマーの福田さんが「モロカイレースみたいやのー」と言った。本当にそういう感じだった。
 2時間ぐらいそのままで走り、タックすると関西空港の沖まで来ていた。近くを走っていた「カリーニョ」はそのまま和歌山の方へ突っ込んで行った。岸よりを走るつもりだろう。タックしてすぐに風が振れた。ちょうどタッキングアングルが60度ぐらいになった形になり、バウがマークの方を向いた。ラッキー。
今度はポートタックで2時間、関西空港のオレンジ色の灯りが遠ざかる、あと2マイルほどで洲本マークという所で風が落ちて7ノットほどになる。下ハイクして、艇をヒールさせながら回りを見ると、スピンを上げた艇が何艇か通り過ぎた。他のIMXはダンのドライビングのおかげでかなり離したようだ、このレース中、一度も他のIMXは見なかった。
 マーク付近ですれ違ったのは「プロパガンダ」「タック」、あとはよくわからない。いずれもレーティングの高い艇ばかりだ。近い値のY-33Sなどはいなかった。(後でわかったことだが、Y-33sの集団も近くにいたそうだ)
 21時丁度、マーク回航。「MAKI」の2艇身ほど前で白い艇が回航する、ハルに黄色の文字、「ファウンデーション」だ。「MAKI」のすぐ後ろはマム36の「サンタレッド」、なかなか良い所を走っているようだ。マーク回航してスピンホイスト、すぐにジャイブして西の方に出す、すぐ隣に「スレッド」が走っている。ここから西宮までの直線を引いたところに海苔網地帯があるらしくそれを迂回するコースをとるが、ダンが「まだ網は過ぎてないのか」としきりに確認していた。それからジャイブもなく単調なスピンラン、しかしポールの高さやガイの調整はひっきりなしに続く。ツイーカーの調整も頻繁にやっていた。2、3時間走ってジャイブしようとしたら、北から風が入って上りになる、ライトジェノアをホイストして、ポートタック、既に神戸沖に到達していた。近くには「プロパガンダ」「サンタレッド」などが走っている。タックを繰り返して西宮のマークを回ったのが02:21。近くには「MIMI」や「ボイジャー」などが走っている、再びスピンを上げて洲本へ。少し西に出す、風は8ノットほど、艇速は5〜4ノット、夜が明けて日が昇ると風が落ちるだろうから、恐らく洲本フィニッシュになるだろう、なんとしても日が昇るまでに洲本に着かないと、風が落ちてアウトだ。
 その後、順調に走り、夜が明けてきた。朝5時頃は眠気のピークで、萩原はブームを押しながらウトウトしていた。明るくなってくると、フィニッシュして帰っていく艇が見える。「スウィングA」だ。近くを走っている艇もはっきりしてきた。「PAMAドリーム」「MIMI」「サンタ」など。東からも2艇ほど接近している。
 フィニッシュ手前で風が変わった、ジェノアにチェンジ、「MAKI」は07:42ごろフィニッシュ。10分ほど前に「テイク1」が入るのが見えた。東から近づいていたのは「タック」とマム36の「アムール」でこれは先に入られた。
トップの「アオバ」は3時間も前に入ったらしい、これは勝てそうにない。「ファウンデーション」は「MAKI」の30分ほど前だと、フィニッシュを見に来た小田オーナーが言っておられた。これには勝てそうである。

 結局、このレース、クラス1位、総合4位となり、クラス2位に浮上した。
 

つづく

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