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サプライズド フィリピナス
by チャーリー岸田
 
その1 - NISSHINな一日

 6月、弊社創業以来初めての社員旅行が行われた。参加者は弊社の全社員(社長と専務岸田の2名)。行き先はルソン島(フィリピン)のブラカン県。交通費はJALのマイレージポイントで宿泊先は現地の一般民家。知合いの家に泊まるのだ。極めて経済的なイベントである。ただ問題は荷物が多過ぎること。実は今回の旅行は日本で働くフィリピーナの帰省に着いて行くため、そのフィリピーナたちの故郷へのお土産が物凄い量になるのだ。彼女たちには日本で働いたお金を故郷に送金するだけでなく、帰省の際には山ほどのお土産を持って帰る習性がある。故郷の家族や親戚を喜ばせたいのだ。お土産の中身は\100ショップやディスカウントショップで買った安物の日用品ばかり。3枚/\1000のTシャツや\980のスニーカー、そして大量の子供のおもちゃ。日本人の目から見れば安物ばかりだが、フィリピンで暮らす一般の人々にとってはなかなか目にすることのできない輝くような宝物なのだ。たとえば日本製のシャンプーなどはフィリピンの女性にとっては滅多に手に入らない超高級品である。もちろん日本では高級品でも何でもない安物のシャンプーである。しかし、シャンプーどころか石鹸さえも贅沢品であるフィリピンでは、これが我々日本人には想像のできないほどの垂涎の的なのだ。

 写真は出発前の成田空港でカート3台分のお土産を前に得意気なポーズを取るフィリピーナ姉妹(姉のマリアと妹のリンダ)。空港のカートは縦長なので、奥に隠れている分を入れれば前から見た荷物の倍はある。これらを運ぶのが俺達の役目だ。

成田空港出発前

社長 「まったくよう。これじゃあオーバーウェイトだ。超過料金払えるのか?」
マリア 「大丈夫。このくらい超過料金なしで何とかなるよ。」

 我々日本人2名の荷物は背中に背負った小さなバックパックだけ。1人20kgの手荷物枠は、大部分がこの姉妹のお土産で埋められることになる。制限枠を超えた分は無理矢理の力技で機内持ち込みとなる。

 空港のロビーでやたらと目立っていた我々の荷物だが、マニラ行きカウンターに並んだ途端に全く目立たなくなった。他の乗客も皆似たような状況なのだ。そしてほぼ全員が持っているのが『日清シーフードヌードル』の段ボール箱。フィリピンへのお土産にはこれが欠かせない。フィリピン人は全員日清シーフードヌードルが大好物なのだ。現地でも同じものを売っているが、価格は1個\300程度。所得が日本の10分の1で大家族のフィリピン人には、このような高級品には手が出ない。そして現地の家族は日本に出稼ぎに行った娘たちが日清シーフードヌードルをお土産に持って来てくれることを楽しみに待っているのだ。

 次の写真は、マニラ空港の手荷物受取場。コンベア上を回っているのが日清シーフードヌードルばかりなので、箱にはマジックインキででかでかと名前を書いておかなければならない。

NISSHIN

 空港には車2台に分乗した家族が迎えに来ていた。またしても定員オーバーである。我々4名を迎えに来るのだから、我々の乗る分を空けて『定員−4名』以下の人数で迎えに来るべきなのだが、フィリピン人にそんな話をしても無駄である。郷に入りては郷に従え。我々は膝の上にでかい荷物を抱えながらすし詰めの車内でこの人たちの故郷まで揺られることになる。

現地人 「日本からの長旅で疲れただろう。とりあえずこの近くでお茶でもして行かないか?」
岸田 「おう! そうしよう。」

 10人乗りの車2台に分乗した24名のメンバーはマニラ市内のファストフード店に入り、そこでいきなり宴会のような騒ぎが始まった。元々テンションの高いフィリピン人である。何ヶ月も離れていた家族の再会とあっては、皆が興奮するのも無理はない。大騒ぎは延々と続いた。

岸田 「リンダ、何時頃出発するんだ?」
リンダ 「そんなこと誰も考えてないよ(Every One No Idea.)。ここは日本じゃないんだから。」

 夕方になってやっとこの一族は腰を上げた。

 車が走り出すと、すぐに家族の1人が言い出した。

現地人 「トイレに行きたい。」
岸田 「何でさっきの店で行って来なかったんだ?」
現地人 「だって、あのときはオシッコしたく無かったんだもん。」

 これがフィリピーノである。『これから長旅だから、とりあえず先にトイレに寄っておこう。』そんなことは誰も考えない。トイレに行きたくなってからトイレを探すのだ。先のことを全く考えないのがフィリピーノである。そのためフィリピンでは健康保険や損害保険に入る者など居ない。健康なときに病気になったときのことなど考えることなど絶対にないのだ。

 マニラ市内は慢性的な渋滞である。車を止められる場所などなかなか無い。

運転手 「この先に××デパートがあるから、そこのトイレに行こう。」

 大混雑の中、時間を掛けて何とか車をデパートの駐車場に入れると、車の中のメンバーはトイレに行くだけでなくウィンドウショッピングを始めたり、それぞれ好き勝手な行動を始める。これが日本であれば、「それでは10分間のトイレ休憩を取ります! XX時XX分までに車に集まって下さい!」などと仕切り始めるやつが出るところだが、フィリピンにそんなやつは居ない。それぞれが勝手にデパートの中を歩き回り、長い時間が経って全員が車に戻ったときに出発するのだ。空港に着いたのは昼間なのに、もう外は暗くなっている。いったい何時になったら家に行けるのだ?

 やっと車が走り出した。そこでまた別のフィリピーノが言い出す。

現地人 「トイレに行きたい。」

 なんでさっきのデパートでトイレに行かなかったのだ! しかしこの人たちにそんな事を行っても無駄である。

 これが何回も繰り返され、やっと車はハイウェイの入口に近付いた。やれやれ。こうなることは判っていても、さすがに何回も繰り返されるとうんざりして来る。ところで岸田よりも遥かに短気な社長が怒り始めないのが不思議だ。隣を見ると社長が下を向いて何事か呟いている。

社長 「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・・・。」
岸田 「何やってるんですか?」
社長 「こう言うときはなあ、『無』の境地にならなければやって行けないんだよ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・・・。」

 フィリピン渡航歴20回近くになる社長は、やっとこの環境に適合する手段を見つけたようだ。

現地人 「何か臭いぞ。」

 車の中で誰かが言った。誰かがおならをしたようだ。

現地人 「この臭いはフィリピン人のおならの臭いではない。」

 社長と岸田が疑われた。

社長 「岸ちゃん、やったか?」
岸田 「俺はやってませんよ。」
リンダ 「私よ。だってさっきからウンチ我慢してるんだもん。」

 日本滞在歴の長いリンダは、日本食ばかり食べているのでおならの臭いも日本人並になっているようだ。そして中途半端に日本的な感覚を身に付けた彼女は、我々日本人が何回ものトイレ休憩攻撃にうんざりしている事に気を使って家に着くまでウンチを我慢するつもりで居たようだ。

岸田 「次のトイレで停めてくれ! リンダがウンコするんだ。」

 これ以上リンダにおならをされてはたまらない。


 車はハイウェイを降り、ブラカン県に到着した。目的地である彼女たちの家はもうすぐだ。

現地人 「その前にXX叔母さんと○○叔父さんの家に寄って行きます。」

 迎えに来ていたメンバーの中には、マリアとリンダの実家に住んでいる家族だけでなく、近くの町に住む親類も含まれていたのだ。

 そしてその家々を回る度に、その家の住人が車を降りるだけでなく、長時間の大歓迎が待っている。結局目的地に着いたのは深夜であった。


 マリアとリンダの実家では、元々大家族の上に親類縁者まで集まり大騒ぎになっていた。皆久し振りに帰郷する娘たちを歓迎に来ているのだ。そのままなし崩し的にパーティが始まった。大騒ぎをしながらも、彼らの目はマリアとリンダのお土産の箱に注がれている。マリアが最初に開けた箱は子供達へのお土産であるオモチャの箱。子供たちの歓声が響いた。その後色々な雑貨の箱が開けられ、沢山のお土産が親類や友人達に配られた。日本の基準では安物ばかりだが、皆の目はキラキラと輝いている。

子供 「Oh! NISSHIN!!」
子供 「NISSHIN! NISSHIN!!」

 子供たちが日清シーフードヌードルの箱を見つけたようだ。彼らが一番期待しているお土産である。フィリピンで『NISSHIN』と言えば日清シーフードヌードルの事である。早速お湯が沸かされ全員にシーフードヌードルが配布された。

マリア 「しまった。あれは後で家族だけで食べるつもりだったのに・・・。」

 俺達が苦労して担いで来た大量のカップラーメンが、一瞬のうちに消えて行った。NISSHINな夜であった。



つづく


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